澪ちゃん恋をする
「よく?」
そう聞き返すと先輩はあたしを抱きしめたまま言った。
「澪ちゃんが中1の夏休み…」
「え?」
「駅の近くで不良に絡まれなかった?」
そう言われてあたしは考えた。
中1の夏休み?
駅の近く?
不良……
「あっ!!!!えっ!?」
「思い出した?」
クスっと先輩は笑った。
確か学校の水かけ当番をやった帰りに不良っぽい人にナンパされたとき、金髪の人が助けてくれた。
もしかしてあの人……。
「き、金髪の人!!!!」
そう言って先輩を押し返した。
「そ、あれ俺だよ。昔はやんちゃだったんだ」
先輩は照れたように頬を掻いた。
「う、うそ…」
あたしはあの人に初めて一目惚れをした。
けれど、名前も学校も知らなかったから、玲次にはもう会えないとか言われた。
でも、あたしはまた会える気がしていた。
それがまさか先輩だったなんて…。