澪ちゃん恋をする
「あら、澪さんどうしたの?」
保健の先生の言葉を聞いて俺の眠気は一気に吹き飛んだ。
今、澪って…
「クラスのやつが喧嘩してガラス割って怪我して…」
須藤の声が聞こえた。
喧嘩?
怪我って澪ちゃんが?
俺は急いで起き上がってカーテンを開けようとした。
けれど…
「はぁはぁ、玲次…」
澪ちゃんの聞いたこともないような声が聞こえた。
なにかに怯えているようなそんな声が。
「大丈夫、大丈夫だから」
「いやぁ。血が…ガラスが…」
「澪。澪のせいじゃないから」
澪…のせい?
ダメだ。意味が分からない。
俺はカーテンの前で話を聞いていた。
「それを見ちゃったのね」
保健の先生の声が聞こえた。
「とにかく、澪さんをあっちのベッドに」
「イヤっ、玲次。やだ、行かないで…」
「大丈夫、ここにいるから。ずっとここにいるから」
そう言った後、隣のベッドがきしむ音がした。
きっと澪ちゃんがベッドに横になったんだろう。
時々澪ちゃんの弱々しい声と、須藤の『大丈夫だから』という声が聞こえてきた。
その後、1時間経っても澪ちゃんも須藤もカーテンの中から出てくる気配がなかった。
俺はそっと保健室を後にした。