澪ちゃん恋をする


「澪?」



案の定、そこには澪がいた。

フェンスに手をかけて遠くを見つめていた。

そして俺を見ないまま口を開いた。



「あたしのせいで…」



澪の小さな声を俺は懸命に拾う。



「あたしなんかがいたから…お母さんは死んだ…」



「…そんなこと…」



ないなんて言えなかった。

だって俺は澪の家族のことを何も知らない。

澪の父さんだって知らない。

澪の母さんは1度見たきり。



「…お母さん、育児ノイローゼっていう病気だったんだ…」



澪は俯いて言った。

育児ノイローゼ?

俺にはよくわからない。



「子供を育てるときに、悩みすぎるとなっちゃう病気なんだって」



そう言って澪は振り向いて俺を見た。

そんな澪の目は、死んだように暗かった。



「だから全部あたしのせい…。あたしがが死んでも誰も悲しまない…」



そう言ってまた振り返って遠くを見つめた。

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