夕凪に映える月
オレンジ色に染まっていた海はいつしか、紺色に姿を変えて、空では淡い光を帯びた月が私たちをそっと見ていた。
「ナギが哀しむなら…
もうこのセリフは言うのやめる。」
「……うん。」
私たちは何事もなかったかのように、自転車を押して、ゆっくりゆっくり家路についた。
ほんのり香る、潮の香り
引いては返す、波の音
あっちゃんと私の間には
いつも海の音が横たわる。
爽やかな潮風に
柔らかな波音
それらはいつも私たちを温かく見守ってくれていて、海の香りを嗅ぐ度に、私はいつもホッとする。
「もうすぐ…冬が来ちゃうね。」
冬が来ると部活はしばらくの間、お休みになる。
そして春が来たら……
あっちゃんは高校を卒業する。
私はまた、ひとりぼっちになっちゃうんだ。