夕凪に映える月


追いつきたくて
やっとのことで追いついて
一緒の高校で過ごせた時間は、たった一年。


風香さんみたいに
お兄ちゃんみたいに
あっちゃんと私が同い年だったら、こうしていつまでも彼の隣で歩いていけるのに。



冬なんて、春なんて、来なければいい。



そんなことを思いながら、自転車を押していると

「そうだな。
今年のシーズンはもう終わりだなぁ。」

私の気持ちなんて知りもせずに、あっちゃんは淋しそうに目を細める。


あっちゃんの背中を見られるのは、あと少し。同じ場所で同じ時を過ごすのは、あともう少し。


妹でもなんでもいい。
彼と同じ場所で同じことを見て、感じられるなら……私の恋はそれでいい。






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