夕凪に映える月


「大体、凪紗はズルいんだよ。」

「え?ズルい??」

「そっ。風香先輩みたいにアツ先輩と恋人として向き合うでもなく、かといって後輩と先輩として向き合うでもなく、居心地のいいニセモノ兄妹なんか演じちゃってさ??見てて正直、吐き気する。」


――え…??


こっちゃんの厳しい言葉に空気が止まる。
そんな私の表情なんて気にもしないで


「側にいたいんだか、この関係を崩したくないんだかは知らないけどさー?この状況、オマエだけが満足してる状況だってわかってる??」


こっちゃんは淡々と言葉を紡ぐ。




私だけが満足してる??
どういうこと??


だって私が勝手にあっちゃんに片思いしてて、こっそり思っているだけで、誰にも何にも迷惑かけてないハズだけど……。




こっちゃんの言ってる言葉の意味がよく分からなくて、カレーをすくったスプーンを持ったまま、ピタリと動きを止めていると


「どう考えたって風香センパイ、いい気はしてないと思うぞ??」


ハァとため息を吐いて、こっちゃんは大盛りにすくったカレーをパクンと勢いよく口に入れる。




風香さんが…??
どうして??
だって風香さんは私の気持ちなんて何一つ知らないはず……


こっちゃんの言っている言葉の意味が分からなくて、さらに首を捻っていると



「あのな。気づかねぇハズないだろーが。」

「え??」

「凪紗がアツ先輩のコト見てる視線に風香センパイが気づかないハズないだろーが。」



こっちゃんは呆れたように呟いてスプーンをお皿の上にカチャンと置くと、カレー皿の隣に置いておいたコップを手に取る。



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