夕凪に映える月
私をナギと呼び、妹のように可愛がってくれる、男らしいあっちゃん。
あっちゃんは私の兄・小林湊人(コバヤシミナト)の親友であり、同じヨット部に所属する部活仲間。ついでに言えば二人はセーリングと呼ばれるヨットレースでペアを組む、パートナー同士でもある。
主にかじ取りの役割を担うスキッパーと呼ばれる場所を担当するのが、お兄ちゃん。
船の左右の傾きの調整や海の状態。他艇の状況を把握して進路判断の役割を担うクルーと呼ばれる場所を担当するのが、あっちゃん。
波を読み風を読むあっちゃんに、船の中を生き生きと動き回るお兄ちゃんはとってもカッコよくて、私の自慢。
そんな二人を応援したくて…。
中学生の頃は高校のヨット部の練習場に出入りして、二人の練習を見守るのが私の日課になっていた。
「ミナト!バテてんじゃねーよ!
しゃかしゃか動け!!」
「うっせー!アツ!!
オマエは楽かもしんねーけどなー!意外と大変なんだぞ!スキッパーって!!」
海の上で楽しそうに軽口を叩きあいながら風と波を操って、自由自在にヨットを動かす二人。
陽の光を浴びてキラキラ光る波間はとても綺麗で、その光としぶきを浴びて輝く二人はもっともっと美しい。
“美しい”なんてオトコの人に使うのは少し変かな??
でも素直にそう思うんだ。
海とたわむれて、子どものように無邪気な顔して笑うあっちゃんは誰よりも、何よりも、美しい。その言葉がとっても似合う。