夕凪に映える月
*海に沈む雪
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こっちゃんと怪しい取引をしてから約2か月。
世間はすっかり冬将軍の治める街に生まれ変わり、ビュウビュウと北風が吹きつける厳しい季節になった。
口から吐いた息が真っ白に染まり、冷たい風を吸い込んだ鼻がほんのり赤く染まる季節になった頃……受験を控えた三年生は自由登校となっていた。
当然のことながら、あっちゃんは家にこもって勉強してるらしく、学校には一度も来ていない。
そんなこんなで、あっちゃんと学校ですれ違うコトも、彼の姿を見かけることすらなくなってしまって、こっちゃんとの約束である“告白”をするチャンスすら見つけられなくて。
彼のいない学校で変わらぬ毎日を過ごしていた頃、私はある一つの大きな異変に気付いてしまった。
「もしもし……
あ~~、風香??どうした??」
最近、お兄ちゃんの携帯に風香さんからよく連絡が入るようになった。
偶然なのかそれとも示し合わせたのか、それはわからないけれど……風香さんとお兄ちゃんは東京の同じ大学を受験する。
最初は同じ大学を志望する同士、色々相談することがあるのかなぁ、なんて思っていたけど……
「え…??大丈夫だって。
アツが浮気なんてするわけないじゃん。ずっとアイツの側にいる俺が言うんだから…。うん、うん…。」
部屋で電話をしていたお兄ちゃんの電話をたまたま盗み聞きしてしまった時に、私はそうでないことにやっと気づいた。
あっちゃんと風香さん
もしかしたら上手くいってないのかもしれない。