夕凪に映える月
ずっと一緒にいたから
お兄ちゃんだと思っていたから
この執着が恋であると気づくのが、遅すぎた。
眩しい気持ちで彼を見て
一緒にいるだけで心が安らぎ
側にいるだけで満たされる。
この気持ちが恋だと気づくのが…遅すぎた。誰より近くに彼の側にいたから、この気持ちが恋なのだと上手く自覚できずに時間だけが過ぎてしまった。
遅すぎた。
ともかく全てが遅すぎた。
そのせいで私、小林凪紗(コバヤシナギサ)は恋に気づいた瞬間に失恋するという、なんとも間抜けな初恋を体験してしまったんだ。
ーーばかだなぁ、私。
あの勝手な失恋から、もう二年。
私は高校一年生になり、あっちゃんは高校三年生。
相変わらず仲良さそうな二人を見るとチリチリと胸が痛むけれど
「ナギー!一緒に帰ろうぜ!」
いつもみたいにあっちゃんが笑いかけてくれると、それでいいやと今は思える。
あっちゃんの隣にいたいなら、この気持ちに封をしなければいけない。
だって…ね??
恋してるとバレた瞬間、きっとあっちゃんは私から離れていく。
そんなの、とてもじゃないけど耐えられそうにない。
あっちゃんに笑いかけてもらいたいから。あっちゃんの隣でずっとずっと笑ってたいから、私はこの気持ちを封印しよう。
ズルいかもしれないけれど、妹ならば、ずっとずっと一緒にいられる。
友達ならば
妹ならば
彼の隣で笑っていられる。
いつしか私はそんな風に考えるようになっていた。