夕凪に映える月
2歳の年の差。
どんなに頑張ってもその差は埋められない。わかっていても、知っていても、やっぱりこんな時には寂しくなる。
たった一か月の間で大人びたあっちゃん。
そんなカレと同じ時間をどう頑張っても過ごせない私は、こんな彼を見るだけで切なくなって、泣きたくなる。
——風香さんなら違うのかな。
思ってもしょうがないコトなのに、考えたってしょうがない事なのに、こんな時には考えずにはいられない。
カレと同じものを見て
同じことをしても、同じように感じられない、私。
どこまでいってもあっちゃんはお兄ちゃんで私は子ども。
幼い私はカレと同じ目線で物事を見られない。
——はぁ…今更か……。
心の中で大きなため息を吐きながらテクテクとあっちゃんに向かって歩き出すと
「ナギ、部室のカギは??」
「あ…、持ってるけどどうして??」
「とりあえず中入ろうぜ。太陽も消えてきたし……このままじゃお互いに凍死する。」
そう言って、あっちゃんはブルブルと体を震えさせた。
「変な、あっちゃん。」
「なんでだよ。」
「そんなに寒いのが嫌なら、もっとあったかい所に呼び出せばよかったのに。」
クスクス笑いながらカバンの中からカギを取り出して、部室のカギを開けようと扉に手を当てると
「しょうがないじゃん。」
「…え……??」
「人目につかないとこって……ここしか思い浮かばなかったんだから。」
私はフンワリと温かい、でも力強い彼の腕にギュッとギュッと抱きしめられていた。