夕凪に映える月
白い息とともに、あっちゃんがそんな言葉を呟いた後、空からは白くて小さな雪がフワフワと降りてきた。ゆっくりゆっくり降りてくる小さな雪は、静かに海に消えていく。
「ナギを誰にも渡したくない。」
彼は私の耳元でハッキリと、そう言った。
「冗談…でしょ?」
突然の告白が信じられなくて、嬉しいよりもザワザワした気持ちが強くて
「からかわないでよ、あっちゃん。
本気にしちゃったらどうするの??」
いつものようにおちゃらけた雰囲気でそう尋ねると
「違う、からかってなんてない。
俺は……真剣だから。」
彼は強い口調でそう言い切る。
だけど、だけど……
「風香さんは??
風香さんはあっちゃんのカノジョでしょ?」
お兄ちゃんの口からも、あっちゃんの口からも、2人が別れたなんて話は一言も聞いてない。
意味の分からないあっちゃんの告白。
攻めるような口調でそう尋ねると
「風香の受験が終わったら別れるつもりでいたんだ。受験直前の変な時にフッて気持ちをかき乱したら……悪いから。」
あっちゃんは平気な顔して、こんな悪い言葉をポツリと呟く。