夕凪に映える月


白い息とともに、あっちゃんがそんな言葉を呟いた後、空からは白くて小さな雪がフワフワと降りてきた。ゆっくりゆっくり降りてくる小さな雪は、静かに海に消えていく。


「ナギを誰にも渡したくない。」


彼は私の耳元でハッキリと、そう言った。



「冗談…でしょ?」



突然の告白が信じられなくて、嬉しいよりもザワザワした気持ちが強くて


「からかわないでよ、あっちゃん。
本気にしちゃったらどうするの??」


いつものようにおちゃらけた雰囲気でそう尋ねると


「違う、からかってなんてない。
俺は……真剣だから。」


彼は強い口調でそう言い切る。



だけど、だけど……


「風香さんは??
風香さんはあっちゃんのカノジョでしょ?」


お兄ちゃんの口からも、あっちゃんの口からも、2人が別れたなんて話は一言も聞いてない。



意味の分からないあっちゃんの告白。
攻めるような口調でそう尋ねると


「風香の受験が終わったら別れるつもりでいたんだ。受験直前の変な時にフッて気持ちをかき乱したら……悪いから。」


あっちゃんは平気な顔して、こんな悪い言葉をポツリと呟く。



< 43 / 84 >

この作品をシェア

pagetop