夕凪に映える月
普通に考えたらありえない、あっちゃんの告白。
あっちゃんはズルい。
素直にそう思った。
いい人ぶって
優しい人を演じて
風香さんの手を離さない。
そのくせ抗えない強い強い力で、私を奪おうとしてる。
——酷い人。
あっちゃんはズルい人。
大好きだけど、大好きだから、そんなカレに無性に腹が立った。
「ちゃんと全部終わった後で、言って欲しかった。」
「⋯⋯ごめん。」
「どうして?なんで中途半端な状態でこんなコト言ったの??私に対しても、風香さんに対しても失礼だよ。」
胸の近くに回された彼の腕を掴みながら、泣きそうな声でそう呟くと
「早く言わなきゃ⋯⋯って思った。」
「⋯⋯え??」
「言っただろ??俺、長く生きられない気がする、って。ナギが泣くからもう言わないって言ったけど、やっぱり俺はその気持ちから逃れられない。」
そう言って、彼はすがる様に私のカラダに腕を巻きつかせた。私の背中と彼のおなかが空気1つ入らないほどにピッタリと密着して、絡まった太い腕が私の小さな体を優しく包む。
私の肩に顎を乗せると
「絶対に来る明日なんてない。そう思ったら⋯⋯いてもたってもいられなくて⋯⋯ただ伝えたかったんだ。ナギに好きだ、って。」
「あ、あっちゃん⋯⋯。」
「返事はいらない。俺のワガママで告白しただけだから、ナギは何も気にしなくていいよ。」
そう言って、彼は優しく私に笑いかけてくれた。