夕凪に映える月
「あったかい…。」
思わずそう言葉を漏らすと
「それは良かった。」
あっちゃんは満足そうに笑って、私の隣に腰掛けた。
ゆらゆらと生きているように揺れる、ストーブの火。窓の隙間から漏れる隙間風を聞きながら暖を取る、おかしな2人。
友達でもない
先輩と後輩でもない
知り合いでもない私たちの関係は一体何なんだろう。
あっちゃんは、私を好きだと言った。
だけど返事はいらない、と言った。
風香さんとは別れていない、とも。
わかんない。
あっちゃんが何を考えているのかわからない。
告白するだけで満足で、私の気持ちは関係ないってこと??
あっちゃんの思考回路は意味不明で、まるで迷路のようだ。出口は一つだけなのに、複雑すぎてその出口が見当たらない。
これで満足なのかな。
この状況で満足なのかな。
ふと隣を見ると私とあっちゃんの間には、人一人分の隙間があって。その距離感はお兄ちゃんと妹を演じてた頃と何一つ変わらなくて、その小さな隙間を見ているだけで切なくて泣けてくる。
変わらない。
この距離は変わらない。
私を可愛い妹だ、と言ったあの頃と今の二人の距離感は何一つ変わっていない。
こうなってくると、さっき背中に感じた彼のぬくもりすらも疑わしくなってくる。
「あっちゃん。」
「⋯⋯ん??」
「ホントに私のコト好きなの??」
蚊の鳴くような小さな小さな声で尋ねると
「⋯⋯うん。好きだよ。」
彼は何のためらいもなく、短い言葉でそう答える。