夕凪に映える月


「あったかい…。」

思わずそう言葉を漏らすと

「それは良かった。」

あっちゃんは満足そうに笑って、私の隣に腰掛けた。



ゆらゆらと生きているように揺れる、ストーブの火。窓の隙間から漏れる隙間風を聞きながら暖を取る、おかしな2人。


友達でもない
先輩と後輩でもない
知り合いでもない私たちの関係は一体何なんだろう。


あっちゃんは、私を好きだと言った。

だけど返事はいらない、と言った。

風香さんとは別れていない、とも。



わかんない。
あっちゃんが何を考えているのかわからない。


告白するだけで満足で、私の気持ちは関係ないってこと??


あっちゃんの思考回路は意味不明で、まるで迷路のようだ。出口は一つだけなのに、複雑すぎてその出口が見当たらない。


これで満足なのかな。
この状況で満足なのかな。



ふと隣を見ると私とあっちゃんの間には、人一人分の隙間があって。その距離感はお兄ちゃんと妹を演じてた頃と何一つ変わらなくて、その小さな隙間を見ているだけで切なくて泣けてくる。


変わらない。
この距離は変わらない。
私を可愛い妹だ、と言ったあの頃と今の二人の距離感は何一つ変わっていない。


こうなってくると、さっき背中に感じた彼のぬくもりすらも疑わしくなってくる。



「あっちゃん。」

「⋯⋯ん??」

「ホントに私のコト好きなの??」



蚊の鳴くような小さな小さな声で尋ねると

「⋯⋯うん。好きだよ。」

彼は何のためらいもなく、短い言葉でそう答える。


< 47 / 84 >

この作品をシェア

pagetop