夕凪に映える月
まっすぐにまっすぐに私に向かって投げかけられる、あっちゃんの視線。
瞳の奥を射るように、心の内を探る様に。だけどどこか温かで優しいあっちゃんのその視線に引き寄せられるように彼の方へゆっくり顔を向けると
「答えて、ナギ。」
彼は耳の奥に響くような官能的な声を上げて、ストーブにかざしていた私の手をそっと握った。
ストーブの火よりも温かい、生きたあっちゃんの熱い熱い手。知っていたはずの“お兄ちゃん”としての温かさはその手にはどこにもなかった。
さっきまで二人で冬空の中にいて。手のひらも指先も凍える程に冷たくなっているハズなのに、カレに触れられた瞬間触れた場所が熱を持ったように熱くなる。
この手に感じる熱っぽさは何なんだろう。
このドキドキは何なんだろう。
手が心臓になっちゃったんじゃないか、と思ってしまうぐらいに指先が熱く脈打つ。
熱っぽい視線
切なげな声
そして⋯⋯熱い指先
その全てに、きっと私は酔わされたんだと思う。
「好き⋯⋯だよ??」
「え??」
「私⋯ね??ずっとあっちゃんが好きだった。中学二年生の時からずっとずっと。」