夕凪に映える月
お兄ちゃんと風香さん
私とあっちゃん
お互いに何かがおかしいと感づき始めた、その次の日。
『俺、今日、風香に言うから。』
今の今まで、何の連絡もなかった彼から唐突なメールが届いた。
『うん、わかった。』
待ってるね、とも
楽しみにしてる、とも
次に続く言葉が見当たらなくて、ただそれだけを返すと
『ごめんな、ナギ。
俺のわがままで振り回して、嫌な思いをさせてごめん。卑怯者でごめん。だけど、今日で終わりにするから、どうか俺を許して欲しい。
それでさ?
全部終わったら、海に行かないか。
いつものあの入江に行こう。
そして一緒に、あの夕焼けを見よう。
そうしよう、ナギ。
あの場所から始めよう。
2人の関係をもう一度、あの場所から始めよう。
全て終わったら必ず連絡する。
絶対に迎えに行くから、どうか俺を待ってて欲しい。』
あっちゃんからは、こんなメールが届いた。
こんなの、強烈なラブレターじゃないか。
それを見た瞬間、そう思った。
嬉しかった。
純粋に、ただ純粋に嬉しかった。
卑怯者で、確信犯。
そんなあっちゃんのくれた言葉が、ただ嬉しかった。
そんな私はひどく簡単で、ひどく醜い。
そう思った。