夕凪に映える月


風香さんに嫌わらるのが怖い。
憎まれることが、恐ろしい。


風香さんだけじゃなく、周りの人たちがどう思うかを考えると、もうため息しか出てこない。


ヨット部のみんなだって、白い目で見るだろうな。



100歩譲って、こっちゃんは味方でいてくれるだろうけど…部員のみんなはどう思うだろう。



あっちゃんを風香さんから奪った私をすんなり許してくれるんだろうか……。




そんな甘い考えが浮かんだ瞬間、私は思わず苦笑した。


そんなことあるわけないじゃない。



横恋慕した挙句に、略奪愛だなんて、恥も外聞もあったもんじゃない。

経緯はどうであれ、許されることじゃない。

外聞のいいものでもない。

しばらくは冷たい視線を向けられるんだろう。気づかないところでコソコソ噂をされるんだろう。



許されるはずなんて、ないじゃない。





普通で考えたら、悲しくツライ状況。


だけど……
それでもいい、と思う自分がいるんだから呆れてしまう。



つらくてもいい

一人ぼっちでもいい

悲しくても、さみしくても、しょうがない。



あっちゃんが欲しいと思ってしまった瞬間に、後ろめたさは覚悟したから。

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