夕凪に映える月


卑怯なのはお互い様

私がしてる恋は人から褒められるような恋じゃない。



でも⋯⋯カレが欲しいんだから仕方ない。




後ろめたい気持ち

上手く言葉に出来ないドロドロした気持ち

そんな気持ちを抱えながら、私は窓の外をずっと見ていた。



——海を見たい



自然とそう思った。




春の風が感じられる今日。
きっと今日の海は穏やかで温かで、気持ちいいに違いない。



冬の海はとても寒くて波も高くて荒れるけれど、春の海は少しだけ穏やかになって、海全体が優しい雰囲気に包まれる。


ヨット部の部室のある、あの海。


あの海に早く行きたい、と思った。



大きな海を見てたら自分の悩みなんてちっぽけで、くだらないことに思えてくる。波の音を海鳥たちの鳴き声を聞くだけでホッとする。



誰にもわかってもらえなくてもいい。
理解されなくても、陰口叩かれても仕方ない。


あっちゃんさえいてくれれば。
あっちゃんさえ私の側にいてくれるなら、どんなことにも耐えられる。


そう思った。




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