夕凪に映える月
あっちゃんがいつも言ってた、その言葉。
もう言わない、と約束してくれた、あの言葉。
『俺、長く生きられない気がする。』
その言葉を思い出して
「いやぁぁぁぁぁあーーーーっ!!!」
私は頭に手を当てながら、狂ったように叫び始めた。
嘘だ、嘘だ、嘘だ!!
誰か嘘だと言って!!
「やだぁーっ!!
あっちゃんを……あっちゃんを連れて行かないで!!!!」
彼の言葉を本当にしないで!!
彼の予感を真実に変えないで!!
お願いだから…
お願いだから、誰か嘘だと言って!!!
こんなの悪い夢だと笑ってよ!!!
だけど⋯⋯
「酷い話だわ!!
篤弘君はたった18歳なのに⋯⋯!!こんなこと⋯⋯こんなことひどすぎるわよ!!!」
目の前で涙を流し、恨み言を叫ぶママを見て、コレは現実なのだと思い知る。
どうしようもない涙がとめどなく溢れてきて、喉の奥がカラカラになって、悲鳴を上げた喉がヒリヒリ痛む。
その痛みはコレは夢ではない”と告げているようで、私の胸の奥をキリキリ抉る。
『一緒に海を見に行こう』
そんなメールをくれたのは、たった数時間前のことなのに。
待っていて欲しい、と言ったのは、たった数日前なのに。
約束だけを残して、あっちゃんは勝手に一人で消えて行こうとする。
私を置いて、あの口ぐせのままに、この世界から消えてなくなろうとしてる。
信じられなかった。
こんなことが自分に降りかかるなんて。
夢なら早く覚めてしまいたかった。
こんなまま残されて、こんな中途半端なまま取り残されて、これからどうやって生きていけばいいんだろう。
わからなかった。
何もかもわからなくて
何もかもが信じられなくて
どうしていいのかもわからないくせに
涙だけがとめどなく流れ出してた。