夕凪に映える月
彼の口癖。
「俺、長く生きられない気がする」
それを聞くたび、私は何故だか泣き出したいほど不安になって、心臓がキュウキュウと悲鳴を上げて、苦しく切なく締め上げる。
そんな切ない悲鳴を隠しながら
「何言ってんの。
そんなこと言ってたら風香さん、ないちゃうよ??」
私は彼をたしなめる。
「うーん…。」
「おばあちゃんに言われない?
悪い言葉は言っちゃいけない、って。そんなこと言ってたら本当にそうなっちゃうよ!!?」
言葉は言霊。
言葉は強い力を持つと聞く。
だから、そんなこと言ってたら嘘が本当になってしまいそうで怖くって。
彼がいなくなってしまったらどうしよう、頭の中はそればかり。
無言で海を見つめて
何処か遠くに思いを馳せるあっちゃんを見ていたら、本当に怖くって。
怖くて怖くてたまらなくなって
「嘘でもそんなこと言わないで。」
「え??」
「あっちゃんが死んじゃったら…私が困る。」
気づいたら私はこんなセリフを口にしていた。