夕凪に映える月


震えながらコクンと呟いて。
ゆっくりゆっくり彼の待つICUの部屋の前に着き、ガラス扉の前で彼を見た瞬間

「⋯⋯っ!!!」

私は声を失った。



あっちゃんの隣には、おばさんが座っていてワケのわからない無数の線が機械とあっちゃんを繋いでいる。管という管があっちゃんと機械を繋いでいて、まるでロボットみたいだった。


あっちゃんの頭部は包帯でぐるぐる巻きになっていて、顔には無数の傷が見えた。腕も肩も、目に映るすべての場所には赤黒い傷がついていて、ところどころに赤紫色をした内出血の跡が大きな斑点のように体中に広がっている。

そして⋯⋯
顔は赤黒くはれ上がっていた。



ひどい事故だったのだと。
生きるか死ぬかを迫られる大きな大きな事故だったのだと、その傷が物語る。



——ちがう⋯⋯

こんなのあっちゃんじゃない。



素直にそう思った。


あっちゃんは小麦色の肌に、健康的な笑顔が素敵な人なの。

海が好きで、空が好きで、この小さな海辺の町が誰よりも好きで、いつもニコニコ笑ってて、どんな時でも頭よりも体が動いてしまう人。


こんなところで寝ちゃう人じゃないんだよ。


こんな風に包帯でぐるぐる巻きになってる人なんて⋯⋯あっちゃんじゃないんだもん⋯⋯!!



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