夕凪に映える月
「離して!離してよ、ミナト!!」
お兄ちゃんの制止を振り切ろうと、風香さんが全力でもがく。
そして
「あんたの妹だろうと何だろうと関係ないわ!!この性悪女を殴ってやらなきゃ気が済まない!!」
私に怒りと殺気を込めた視線をぶつけながら、風香さんがさらにもがくと
「バカ!!まだアツは闘ってるんだぞ?!そんなことしてる場合じゃないだろうが!!」
お兄ちゃんはそう言って。
風香さんの体をグッ制止する。
その言葉に我に返り、フッと体の力を緩めた風香さん。
そんな彼女の腕をゆっくりほどいて、ポンポンと頭を叩くと
「ムカつくのはわかるけどな。余計な恨みや怒りは捨てて、今はアイツの無事を祈ろうぜ。」
「ミナト……。」
「わかってる。オマエの気持ちはわかるから。アツが無事に戻ってきたら好きなだけ凪紗とケンカさせてやるからさ??今は⋯⋯信じて待とう。」
そう言って。
お兄ちゃんは風香さんの肩を抱いた。