クソガキ
‥‥ほんとにただぶらぶらと歩いた。
行き当たりばったりって‥‥‥結構素敵なことじゃないかしら。
どこ行くかってことで変に気をつかうこともなければ、相手も困らせない。
安心感のある沈黙の中で、私たちは歩いていた‥‥
公園、懐かしい小学校、坂道‥‥
「あ‥‥‥この坂ね、春になったら桜がいっせいに咲くの!」
私はしゃいで言った。
洵は黙っていたけれど‥‥‥
いつもみたいにニコニコしながらちゃんと聞いてくれていて、
歩幅も、ずっと私に合わせてくれていた。
「知ってた?桜が咲くの」
「知ってましたよ。俺も結衣さんみたいに、ここで大きくなったんだから」
ミーン、ミーン
蝉が無機質に鳴いてる、真っさらに晴れた日
蒸し暑い日なのに、
今にもごろんと寝っころがって寝てしまいそうなほど、とっても穏やか‥‥
ほんとは洵に付きあうために家を出たつもりだったのに‥‥‥
いつの間にか、私の方が楽しんでいた