クソガキ
洵の通う高校は、家から逆方向にある。
つまり、私の通う大学が、家と洵の高校の間の位置にあるんだ。
高校の前に愛車のエッセを停め、洵の傘を手に取り、私は車を降りた。
洵の学校に来るのは、これがほぼ初めてと言ってもいいくらい、めったに来たことがない。
雨のせいか、校庭には部活をしている生徒はいなくて…
下校時間もすぎていたので、学校帰りの子もいなかった。
やっぱ、洵に一回電話で確認したほうがよかったかなー・・なんて考えていたら、
すぐにその心配はいらなかったことに気づいた。
「ゆーーーいさーーーーーぁんっ!!」
目の前の校舎の中にある下駄箱から、満面の笑みで私に手を振る男の子がいたからだ。
あれは、どこからどう見ても間違いなく、佐倉 洵平。
ほんの少し嬉しかったものの、私はわざと怪訝な顔をして見せた。
「はい。」
靴箱に入り、私はけだるい感じで洵に傘を差し出した。
「あざーす!!」
「‥はいはい 笑」
ニコニコしながら頭をさげた洵に、しょうがないなー、と思い、ついつい笑ってしまった。
わかってる。根は良い子なのよね。
‥‥そんな私たちのやりとりを傍観していた子がいることに、ふと私は気づいた。
洵の友達なのか、下駄箱の段差に腰をおろし、私をマジマジと見ているのだ…;
洵よりも髪の色が薄くて、ほぼ金髪…かな?
なんだか‥‥やんちゃそうな男の子
その子は、押し黙ってしばらく私をじっと見ていたが、突然
“あっ!”っと声を漏らすと、どっかのおばちゃんみたいに口を押さえ‥
パッとその場に立ち上がった。