三十路で初恋、仕切り直します。
7 --- 女の友情はほどほどに。
「ちょっともう、泰菜飲みすぎよ」
「ごっめーん、弥生ちゃぁん」
足元をふらつかせる泰菜は、弥生に支えられながらバス停までの道を歩いていた。謝るようなことを言いつつ、本当はあまり罪悪感を感じていないのは、自分で思っている以上に酔っているからなのだろう。
あれから再び個室部屋に戻った泰菜は、そこから駐車場でなにやら親密そうに話をするエリカと法資の姿を見る羽目になった。
べつにわたしは法資の彼女じゃないんだし、と思いつつもワインをボトル一本を開ける勢いで杯を重ね、結果『結婚報告会』がお開きになる頃にはだいぶ出来上がってしまっていた。
裕美と何人かはそのまま二次会へ、夜は都内でデートだと豪語していたはずのエリカは一人逆方向の下り電車に乗り、酔っ払った泰菜は弥生と一緒にビジネスホテルのある駅までバスで向かおうとしていた。
バス停まで来ると弥生がベンチに座らせてくれる。
「弥生ちゃん、ありがとぉ」
弥生はすかさずバス停後ろにある自販機でミネラルウォーターを購入する。
「ほら、これ飲んで」
そっと飲み口を口元に当ててくれる。よく冷えたそれはアルコールで火照った体に気持ちよく染みていく。
「少しは落ち着いた?」
弥生はやさしく背中をさすりながら顔を覘きこんでくる。昔から滅多なことで感情を荒げない穏やかな弥生の存在が、今日はいつも以上に心地よかった。
「……弥生ちゃん」
「うん」
「弥生ちゃんって素敵だよね」
「何よ急に」
「アレンさんが日本までさらいに来る理由がわかるなぁ」