三十路で初恋、仕切り直します。
泰菜の肌から一度唇を離し、泰菜の目を上から覗き見ながら法資が言う。怒っているわけではないだろうに、眼差しが鋭い。
「違うのか?」
いきなり幼馴染という関係を飛び越えて男の顔を見せる法資に戸惑い、まともに答えることなど出来なかった。
「もう。法資、やっぱりまだ酔ってるんでしょ」
誤魔化すように言った自分の方が、本当はよっぽど変だった。
余裕ぶった、それでいて物欲しげにも見える法資のねっとりと絡み付くような視線に晒されているだけで、思わず羞恥も照れも全部投げ出して、自分を法資に差し出してしまいたくなっていた。
欲しがってくれる法資に自分のすべてを受け取って欲しい。
自分からそんな望みを抱くことは初めてのことで、たまらなく恥ずかしかった。
「……なんか今日の法資、変だよ」
自分でも戸惑ってしまうような恥ずかしい欲求を法資に悟られたくなくて、ひたすら平静なふりして作り笑いまでしてみる。こんなときにまで素直になれない自分を歯痒く思うけれど、法資はそんな泰菜を面白そうに見下ろしてくる。
「おまえも変にしてやるよ。そうすりゃ気にもならないだろ」
「もう何言って……ちょっとっ」
ニットを勢いよくたくし上げられて、いきなり肌を露にされる。
「今日のは地味だな」
泰菜の胸にある付け心地重視のシームレスのブラを見てそんな品評をしてくる。
「……今日は出勤日だもん」
恥ずかしさがなかったわけじゃないけれど、隠したりはしないで答えると、法資がにやにや笑い出す。
「休日だけエロいの着けてるなんて、おまえもあざといっつぅか、むっつりっていうか」
「べ、別にエロくなんてないでしょ、前につけてたのだってそんないやらしいデザインじゃ」
言い掛けている間にその地味なインナーも強引にたくし上げられ、カップからこぼれ出たやわらかなそれに法資がすかさず吸い付いてきた。ざらついた舌の刺激に意図せぬ甘えたような声が唇から漏れると、法資がうれしそうに笑った。
「いい声」
言われた後で再び法資の口に含まれて、またもや鼻に掛かったような声が出てしまう。
法資にされている行為よりも、それをしているのが法資だということが恥ずかしくて、心が余裕無く煽られる。煽られた分だけすぐに体も熱く潤んできてしまう。