Princess Rigeru
すれちがう人間全員が、自分をじろじろ見て通り過ぎて行く。その視線に気づいて、息苦しいのでリゲルは小さな雑貨屋に入った。
「へえ、王室のお嬢様ってのは、優雅なこった。歓迎してやろうぜ」
いかにも悪そうな男たちが、こちらを見ている。外へ出ようとドアに手をかけるが、
「きゃっ」
なにかに滑って、派手に尻もちをついてしまった。そのうちに、男たちが周りに群がってくる。
「大丈夫~?王女様」
「こんな庶民の町で買い物するのは大変だよなぁ?」
ジロジロとこちらを見てくる男たち。リゲルは逃げようと立ち上がろうとするが、今度は露骨に胸を触られ、そのまま押し倒されてしまった。
「いやぁー!!やめて!お願い!」
体中を撫で回され、尚も胸を触られる。抵抗しようにも手首を抑えられ、身動きできない。あきらめかけた時――
「リゲル!!」
聞き慣れた、優しい人の声。その人の腕が、私を抱えて店の外へと出してくれた。
「お前、俺らの楽しみをよぉ!!」
「俺の許嫁だ。文句があるのか?」
もう会えないと思っていた。
ジュンに、もう一度会えたなんて。
「アクアからの密書が届いたから、と部下に言われて森の中に誘い出されたんだ。行ってみると、弓を放たれて崖下に突き落とされたよ。2日後、父の主治医に見つけてもらえなかったら確実に死んでいた。その人の家で手当てを受けて、回復したときにはもう、戻るところはなかった」
当時の事情を聞いて、安心した。ジュンは逃げてなんてなかった。それでも――
「リゲルは、王室に戻るんだ。俺ではリゲルを守れないから……アクアと結婚して、幸せになってくれ」
「嫌っ!あんな所には戻らないわ!」
「安全な場所だ。今日みたいなこともないし、俺と違って有能な君主だ。君をきっと不幸にはしないよ。俺は、リゲルの幸せを祈ってるから。もう会うこともないけど、お元気で」