【短編】そんな、ある冬の帰り道。
廊下の窓ガラスからグラウンドを覗くと、2年生の男子たちが楽しそうにサッカーをしているのが見える。
「…あ、いた」
仲間が転んで大笑いしているのは、あたしの忠犬。
…元、忠犬。
毎日毎日、校門の前であたしを待っていた。
太陽が照りつける暑い夏も、雪の降る寒い冬も。
池田はあたしを見つけると、嬉しそうに手を振って、駆け寄ってきて。
それを見て、あたしが心の中で〝忠犬池田〟なんて呼んでいるのも知らないで。