Do You Remember?
7年前
「あ、昨日いた人。」
プリント置き場の前で、同じクラスの安村が私を指さして言う。
「あ。」
私も彼の顔を見て、そう返す。昨日の夜のことだった。偶然当たった映画の試写会に、偶然、私と彼が来ていたのは。お互い、映画が終わるまで気付かなかったけれど、帰る時になって、お互いがその姿に気付いた。『同じクラスの人だ…!』と。彼は私の姿に気付くなり、猛ダッシュで、その映画館を出て行ったので、一言も交わしていない。確かに、この映画は子供向けのもので、普段の彼のイメージとは似つかわしい。でも、何だかそんな偶然が嬉しくて、走って帰っていく彼を追いかけた。けれど、その速さに追いつけず、階段の所で断念した。私はてっきり、嫌われたと思っていた。確かに、一昨日新学期が始まって、同じクラスになったばかりの者同士だし、もし話せていたとしても、多分何を話していいのか分からなかったと思う。だけど、嫌われていたのだとすると、明日、学校で会ったら、どういうふうに向き合えばいいのかが分からなかった。しかし、今日になって、こうやって彼から話してきてくれた。私は何だか嬉しかった。とてもとても嬉しかった。人違いなのではないか、とさえ思っていたけれど、
プリント置き場の前で、同じクラスの安村が私を指さして言う。
「あ。」
私も彼の顔を見て、そう返す。昨日の夜のことだった。偶然当たった映画の試写会に、偶然、私と彼が来ていたのは。お互い、映画が終わるまで気付かなかったけれど、帰る時になって、お互いがその姿に気付いた。『同じクラスの人だ…!』と。彼は私の姿に気付くなり、猛ダッシュで、その映画館を出て行ったので、一言も交わしていない。確かに、この映画は子供向けのもので、普段の彼のイメージとは似つかわしい。でも、何だかそんな偶然が嬉しくて、走って帰っていく彼を追いかけた。けれど、その速さに追いつけず、階段の所で断念した。私はてっきり、嫌われたと思っていた。確かに、一昨日新学期が始まって、同じクラスになったばかりの者同士だし、もし話せていたとしても、多分何を話していいのか分からなかったと思う。だけど、嫌われていたのだとすると、明日、学校で会ったら、どういうふうに向き合えばいいのかが分からなかった。しかし、今日になって、こうやって彼から話してきてくれた。私は何だか嬉しかった。とてもとても嬉しかった。人違いなのではないか、とさえ思っていたけれど、