Do You Remember?
二十歳を過ぎても鮮明に思い出す。それは昨日のことであったかのように。
今日は今年一番の猛暑だな…。都会の夏は、日の光がアスファルトに反射されて、動くのも嫌になる。真っ白なトラベルバッグに十分な服と、お気に入りのバッグを詰め込んだ。目白のアパートに鍵をかけて、山手線内周りに慌ただしく乗り込む。実家に帰省するこの日が、一番の猛暑日とは、私も気の毒なものだと自分を哀れみながら、冷房の効いた車内の椅子に座りこんだ。そして向かいの窓から、この東京の夏景色を見る。大好きなスピッツの曲をMDにかけ、戸山公園の緑の見事にみとれている。蝉の声は聞こえないけれど、外に出たら絶対聞こえるな…なんて思いながら、目を閉じた。しばらくして、新宿というアナウンスが流れると、どっと人のざわめきが聞こえて、すごい勢いで人々が入れ替わる。私は、そっと目を開いてみた。向かいの席には、大学生風の男の子が座っている。彼も大きなトラベルバッグを持っている。私とは逆の黒いトラベルバッグ。この人も、大学で上京してきたのかしら。彼も私のことをジロジロと見ている。おそらく同じことを思っているのだろう。私とは逆の左の耳でMDを聴いている。
今日は今年一番の猛暑だな…。都会の夏は、日の光がアスファルトに反射されて、動くのも嫌になる。真っ白なトラベルバッグに十分な服と、お気に入りのバッグを詰め込んだ。目白のアパートに鍵をかけて、山手線内周りに慌ただしく乗り込む。実家に帰省するこの日が、一番の猛暑日とは、私も気の毒なものだと自分を哀れみながら、冷房の効いた車内の椅子に座りこんだ。そして向かいの窓から、この東京の夏景色を見る。大好きなスピッツの曲をMDにかけ、戸山公園の緑の見事にみとれている。蝉の声は聞こえないけれど、外に出たら絶対聞こえるな…なんて思いながら、目を閉じた。しばらくして、新宿というアナウンスが流れると、どっと人のざわめきが聞こえて、すごい勢いで人々が入れ替わる。私は、そっと目を開いてみた。向かいの席には、大学生風の男の子が座っている。彼も大きなトラベルバッグを持っている。私とは逆の黒いトラベルバッグ。この人も、大学で上京してきたのかしら。彼も私のことをジロジロと見ている。おそらく同じことを思っているのだろう。私とは逆の左の耳でMDを聴いている。