Do You Remember?
私はふと安村のことを思った。彼も今、大学生なら、こんな風なのかもしれない。そのまま品川までずっとずっと、忘れられない安村のことを思っていた。品川で降り、羽田行きの切符を買う。さっきの男の子は、人の並でもう分からない。向かう場所は同じだけど、もう二度と会わない人かもしれない。
品川から羽田までの景色はあまり好きではない。帰省の時にしか通らない道のせいか、馴染みがあまりない。見慣れないものを拒むのは生まれ持った人間の習性なのかもしれない。耳に流れ込むスピッツの優しいメロディーだけが、馴染みのある暖かいものだった。しばらくすると、羽田にもあっという間にすぐ着いた。真夏の羽田は、向かう人や帰る人の群れが行き来している。面倒くささにかられながら、大分へ向かう航空便のチケットを購入する。重たい荷物を預けた後、少し時間があったので、お土産コーナーを見回る。相変わらず東京バナナは人気だなとか、あのチョコレート美味しそう!とか思っていると、もう時間だ。私は大分へ向かう便の場所まで歩いた。大分便の場所は一番端なので、余計に歩かなければならない。アナウンスが流れ、機内に乗り込む。私は真ん中より後ろの窓側の席。隣りの席には60過ぎくらいのオジサンが座っている。
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