旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
 水槽を見ると近くをマンボウがゆっくり泳いでいる。

「近くで見ましょう」

 彼は立ち上がると私の手を取り、水槽に向かって歩く。

 突然手を握られドキッ!とした。

 身体全ての神経が彼に握られた左手に集中する。

「マンボウって身体の割りにエラ小さいですね」

「……そうですね」

 彼が言ったルール。

 外に出たら良い夫婦を演じる事――。

 それは今まさにしている、手を繋ぐと言うことも入っているのだろうか。

 ドキドキして思うように彼が見れず、リクエストしたマンボウどころではない。

 本当なら許されないけど今日だけならいいよね……。

 嬉しいって思っても……。

 左手から伝わる彼の温もりに、一時の小さな幸せを感じていた。

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