旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
 待っててくれたのだろうか……。

 そんな事も彼には聞けず、目の前をゆっくり通りすぎていくマンボウを、二人ただ黙って見つめていた。

 繋がれた左手は水族館を出るまで離されることはなかった。

――――――――――
――――――

 「サファリパークも行ってみますか?」

「え?」

 車に乗り込みシートベルトをしていると私の顔を覗き込むように彼が聞いてきた。

 至近距離で見る彼の顔に思わず心臓の鼓動が速くなる。

「あ、でも、サファリパークも行ってたら帰りが遅くなりますし……」

 恥ずかしくて俯き膝に置いた手をモジモジさせながら答えた。

「……そうですね」

 ――え!?

 行きたい気持ちも少なからずあった為、あっさり納得されるとなんだか寂しいものがあった。

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