旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
 するとポツポツと雨が降りだしてきた。

 道行く人は足早に歩いて行く。

 次第に雨は強くなり傘を差して歩く人や雨宿りをしている人が増えてきた。

 そんな人達が傘も差さず、ずぶ濡れで泣きながらとぼとぼ歩く私を好奇な目で見ていた。

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――――――

 1時間かけてマンションに着いたが部屋の前で立ち止まる。

 ポタポタと服や髪から滴り落ちる滴が廊下に染みを作っていく。

 入れない――。

 暫く私と居たくないと言っていた。

 もしかしたらまだ顔も見たくないのかもしれない……。

 今日は新婚旅行だったのに……。

 散々な日だったな……。

 じわっとまた涙が溢れだす。

 それをずぶ濡れの腕でゴシゴシ拭く。 


 やっぱり駄目。

 彼の顔見れない……。


 そう思うと玄関の横に膝を抱え座り込んだ。

 季節は6月。

 冬ではないと言っても全身が濡れていると寒さを感じる。

 極力身をちぢこませ寒さに耐える。

 携帯……大丈夫かな……?

 びしょ濡れになった鞄から携帯を取り出した時、思わず携帯を滑らしカシャン!と落としてしまった。

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