旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
――――――――――
――――――

 彼の実家に帰る日、午前中は仕事があった為、午後から向う事になった。

 法事は次の日にあるのだが、準備も兼ねて一泊する予定らしい。

「では行きましょう」

「はい」

 旅行鞄を持って玄関を出ると、さりげなく私の鞄を彼が重たいだろうからと持ってくれた。

 優しくされると、また胸が弾む。

 そして勘違いしそうになる――。

 きっと顔は赤くなっているから、バレないように俯いて彼の後を追って歩いた。

 そんな自分に嫌気もさす。

 一々こんなさりげない所で意識して勘違いしそうになる自分は馬鹿だと――。

 ちゃんと立場を考えろって私の中にいる冷静な自分は、そんな駄目な私に渇を入れる。
< 76 / 297 >

この作品をシェア

pagetop