旦那様は冷徹社長!?～政略結婚は恋の始まり～

「お祖父さんは若くして鈴木グループを立ち上げた人で、とても苦労して来たようです。それだけ才能と人望があったのでしょうが、とても厳格で鬼の鈴木として各界からは恐れられていたそうです」

　クスクス笑いながら運転をしている彼を見るとお祖父さんの事が好きだったのが窺える。

「孫の俺もお祖父さんにはよく叱られていました」

　彼が怒られる姿を想像すると思わず笑えてきた。

「でも一度だけ……小さい頃だったので記憶も曖昧になってきてますが、一度だけお祖父さんの膝で沈む夕陽を見た事があります」

　あの頃を思い出しているのだろうか、懐かしむ瞳は何処か遠い目をしている。

「縁側に座ったお祖父さんが胡座をかいた上に、まだ幼かった俺を乗せて一緒に夕陽を見たんです。忙しい人であまり一緒にいた事も無いし、顔を見ればいつも怒っていたんですがその日は違ってました……。一緒に見た夕陽はとても大きくて……綺麗で……それを眺めながらお祖父さんが言ったんです……。」