旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
 信号が赤になり車が止まる。

 彼を見つめたまま話を聞いていた私と彼の視線が交わった。

 さっきまでの懐かしむ顔はなく真剣な瞳で私を捉える。

「……お祖父さんは鈴木グループを守って行って欲しいと俺にそう言ったんです」

「守る……?」

「色んな事を犠牲にして来て必死で作り上げてきたこの鈴木グループは、お祖父さんにとって命と一緒だったのではと思います。それをずっと後世に残して行って欲しかったんでしょう」

 そう言うと、彼は前を向く。

 信号が青になり再び車を発進させた。

「お祖父さんが生きている間は鈴木グループは他のグループ会社よりも結束が強かったのですが、3年前にお祖父さんが亡くなり父に代わると、一気に弱まり不景気も重なって各社だけでは負担ができなくなりました」

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