旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~
「すいません。ついベラベラと」

 そう言う彼はさっきまでの険しい表情はなく、いつもの顔に戻っていた。

「……いえ」

 俯いて膝に置いた手を眺める。

 彼は三男という柵を抜け出して、自分で道を作っている。

 型に囚われず自分の執念の為に例え家族を敵に回しても立ち向かう彼は、私から見るととても輝いて見えた。

 私は今まで何かと闘ってきただろうか……。

 嫌な事でも嫌と言わず、ただ言われるがままに生きてきて愛がないだの愛されたいなど、不条理な事ばかり思ってなかっただろうか。

 自分の思いをちゃんと口に出してきただろうか。

 ――変わりたい。

 彼の様に――。

 自分が思う事を口にして自分の道を作って行きたい。

 それが吉となるか凶となるかはわからない。

 でも何もせず自分の人生を終わらすぐらいなら、もがいてみよう……自分なりに。

 変われると信じて――。

 そう思うと膝に置いた手をギュッと握り締めた。

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