幸せになるために
砂糖菓子に関しては、完成品がちゃんと市販されているのかもしれないけれど、「それを買うんだったらじゃあケーキ屋に頼むのと変わらないじゃないか」という、先ほどの吾妻さんの言葉にこれまた繋がる。


「3人だから、5号くらいあれば充分だよね」

「それじゃあ……。ケーキの手配は俺に任せてもらっても大丈夫ですか?」

「あ、良いの?」

「はい。今連載を持ってる雑誌の出版社の近くに、その界隈でおいしいと評判のケーキ屋があるんですよ。担当編集者から世間話で聞いただけなので、俺はまだ食べた事はないんですけど、通りすがりに中を覗くと確かにいつもすごく混んでて…」

「へぇ~そうなんだ。そんなに人気のお店で、今から予約でも、間に合うのかな?」

「イブまでまだ3週間はあるから大丈夫でしょう。そこがダメだったら、他にもまだいくつか候補があるので、その時にまたご相談します」

「うん。じゃ、お願いしちゃおうかな」


流行に敏感な雑誌編集者さんと話す機会が多い人は、やっぱお洒落な物や美味しい物の情報が自然と耳に入って来るんだな~。

うかつに口を出さずに、ケーキに関しては、お言葉に甘えて吾妻さんにお任せする事にしよう。


「オーソドックスなイチゴの生クリームのデコレーションケーキ、サイズは5号で、誕生日を祝うメッセージ付きのチョコレートのプレートと、クリスマス感も出すように、サンタとトナカイのお菓子を飾ってもらって、そしてろうそくを5本付けてもらう、と。こんな感じで良いですか?」


吾妻さんはここまでに出た意見をまとめるようにそう問い掛けて来た。


「うん。OKOK。じゃあオレは、当日の料理を考えようかな」


何だかすごく楽しくなってきて、自然と顔を綻ばせながらオレは言葉を繋ぐ。


「基本、コンビニとかで売ってる出来合いのオードブルに頼るとして、一品だけ、手作りの物にも挑戦してみようかなと思ってるんだけど…」

「手作り、ですか?」

「あ、と言っても、そんな大層なものじゃないよ?例えばクリームシチューとかさ」


「体が温まるもの」「ホワイトクリスマス」というキーワードがランダムに思い浮かび、そこから連想した料理だった。
< 100 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop