幸せになるために
今回、2週間ほど前に「クリスマス関連の絵本5冊、紙芝居5セットと、その他、3~6才の子が見るのに適している絵本を20冊、用意しておいて下さい」という依頼が入り、その時点で手が空いていたオレが担当になったと言う訳だ。

そして貸出日当日は、その時間窓口勤務ではない者が対応する決まりになっていて、本を準備した者と同一人物であるとは限らないのだけど、この保育園に関しては両方オレが関わる事となった。

また、一人で対応するのではなく誰かが補助に入る事、という決まりもあり、渡辺さんがその役目を担ってくれているのである。

しかし、せっかく頑張って用意しても、「ちょっと考えていたのと違うので、書庫内を見せていただいてもよろしいでしょうか…?」と言われてしまう時もあったりする。

基本は関係者以外は立ち入り禁止だけど、団体貸出の利用者の場合は書庫内を見て回る事はスタッフ立ち会いの元、という条件付きで認められているので、その点は問題ない。

ただ、自分の選定が受け入れられなかった事に対して結構へこむし(しかも一応チーフの肩書きを背負っているのに)、当初予定していた対応時間を過ぎると後々の業務に支障が出る恐れがあるので、やはり用意していた本ですんなり納得してもらえるのに越した事はない。


「貸出処理終わりました」

「あ、お疲れ様」


渡辺さんの声に反応し、オレは保育士さんから離れると、ワゴンへと近付いた。

それを引き寄せつつ「では、お車に積み込みましょうか」とお声かけする。


「はい。よろしくお願いします」

「じゃ、渡辺さん。リストの方頼むね」

「了解です。行って来ます」


言いながら、渡辺さんは端末機の前から足早に歩き出すと、出入口へと近付き、扉を全開にしたまま廊下を小走りに進んで行く。

個人に貸出の場合はレシートのような、書名等が印字されている紙が出力されるけど、団体の場合は一度に何10冊も借りるのでそのシステムでは対応できない。

なので「団体」用の別メニューで貸出処理を行う事となる。

そのリストはA4の紙で出力されるようになっているのだけれど、実は肝心のプリンターが書庫内には設置されていないのだ。

「コンピューター室」という部屋が事務室の奥にあり、そこのプリンターから出る仕組みになっているので、入力を終えた後、そこまで取りに行かなければならないのである。
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