幸せになるために
何だかここ数日で、一気に寒さが厳しくなって来たように思う。

朝、布団から抜け出すのがとてもしんどい。

しばらく躊躇してから意を決して起き上がると、掛け布団の上に乗せておいたパーカーを羽織り、両手で自分の体をさすりながら寝室を出る。

ソファーの上で眠る聖くんをまず確認してから、その手前にあるストーブへと近付き、電源を入れ、洗面所へと向かった。

うがいと洗顔を手早く済ませ、再びリビングへと戻ると、ストーブを右手で持ちながらキッチンへと移動し、それを床の上に置く。

これから朝食の準備をするので、寒さに震えながら作業しなくて済むように、セッティングしたのだ。

延長コードで繋がれているので、リビングダイニングキッチンの範囲内をあちこち自由に動かす事ができる。

これから更に気温は下がって行くので、寝室や洗面所に居る時もストーブ無しではいられなくなるだろう。

さすがにその時は延長コードに繋がれていたのでは届かなかったり邪魔くさかったりするので、その都度外して、それぞれの空間内にあるコンセントに直接繋ぐつもりでいるけどさ。


「さて、朝ごはんは何にしようかなっと」


冷蔵庫の前でしばし考える。

ていうかオレ、一人暮らしを始めてから、常に何を食べるかという事ばっかり頭にあるんだけど。

実家にいる時は当たり前のように、食事やお弁当が用意されていたもんな……。

日々の献立を考えるのって、こんなに大変な事だったんだ。

今さらながらに母さんの偉大さを知る。

しかもオレみたいに簡単なメニューをローテーションで出したり、面倒だからってレトルトやカップラーメンで済ませたりしてる訳じゃないもんね。

バリエーション豊かで栄養バランスの整ったとても手の込んだ料理を、家族の為に365日ほぼ毎日、提供し続けてくれてるんだもん。

とてもじゃないけど足を向けては寝られないや。

……と、考えた所でふと思う。

実家って、ここからだとどっちの方角になるんだっけ?

それが分からなくちゃ足をどこに向けて良いかも分からないじゃん!

腕を組んで目を閉じ、頭の中に方位磁石を浮かべながら『う~んう~ん』と唸っていたその時。


「おはよぉ~…」


いつの間にやら起き出し、オレの傍らに立っていた聖くんが、起床の挨拶をしてくれた。
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