幸せになるために
「そうなんだ。ほら、クリスマスを過ぎたら今度はお正月に向けて室内の模様替えをしなくちゃいけないし」


児童書コーナーの場合、何か行事が近付く毎に、色画用紙や折り紙を使ってそのテーマに沿った掲示物を作り、壁や書架に貼り付けているのである。

と言ってもオレはそういったセンスが皆無で、創作はせずに飾り付けを担当しているので、模様替え当日まで特別やる事はないんだけど。

でも、そういう業務がある事は把握していても、細かい分担までは家族は知らないし、今はとにかくその準備が忙しいという事にしておいた方が良いだろう。


「それと、登録してる会社で、チーフ職に就いている人の昇進に向けての勉強会があってさ。そこで発表とかしなくちゃいけないからその原稿作りもあるし」

『まぁ、大変じゃない』


こちらも微妙にウソを織り込んでいる。

確かに勉強会はあるんだけど、来年の2月だし、そんなに前から準備しなくてはいけない程のスピーチを要求される訳じゃないらしい。

一人につき数分間、時間を与えられ「今までこんな風に業務にあたって来ました」的な事を報告するだけのようだ。


『それじゃあ、クリスマスだお正月だって、浮かれてなんかいられないわね』

「あ、いや。お正月には顔出すつもりだけど…。クリスマスの日はバリバリ仕事じゃん?いくら通勤に支障はなかったとはいっても、片道約一時間はかかる訳だからさ。次の日も仕事だから、あんまりゆっくりしていられないし」

『もし何だったら、その日は泊まって、翌日ここから出勤すれば良いと思ってたのよ。でも、着替えとか一旦アパートに置きに行かなきゃならないから、どっちみち面倒よね』

「そうだね。だから今年は、こっちで過ごす事にするよ」

『分かったわ』


基本母さんは子どもの自主性を尊重してくれているので、それ以上の追及はなかった。
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