幸せになるために
「それもそうですね。しかも来年は新年会もあるし」


渡辺さんはあっさりと同意した。

ちなみに、我が職場では忘年会と新年会は交互に行う決まりになっていた。

例えば、今年の暮れに忘年会をやったとしたら、来年の新年会はなく、再来年の1月まで持ち越され、そして同年の12月にまた忘年会、となる。

つまり、会と会の間は11ヶ月以上開けられているという訳だ。

12月と1月という、忙しい時期に立て続けにそういった会に出席するのは時間的にも金銭的にも結構な負担となる。

特に既婚者の場合は、職場以外にも様々な繋がりがあり、そちらとの付き合いも疎かにする訳にはいかない。

なのでそのようなスケジュールにして、また、あくまでも強制ではなく任意参加とする。

……と、いう風に、会社側が定めていて、オレ達はそれに従っているのだ。

確かに、オレはまだ独身だからフットワークが軽いけど、家庭持ちになった時に、同じように気軽に動けるかと問われたら、ちょっと自信がない。

そういう立場の人が肩身の狭い思いをしないよう、きちんと配慮が成されている、納得の規則だと思う。

そして来年は渡辺さんが言ったように、新年会が予定されている年なのであった。


「じゃあ…2月の下旬くらいにしておきましょうか?比企さんの勉強会が終わってからって事で」

「うん。オレはそれで良いよ」

「じゃ、皆さんにもそう周知しときますね」

「よろしくね」


オレがそう返答し、その話はひとまずそこで終わった。

だから来年は、こなすべき行事が数珠繋ぎになっている。

1月下旬に新年会、2月中旬にチーフ職の為の勉強会、そして下旬に渡辺さんが幹事のカラオケ大会。

だけどやっぱり、オレにとって最大のイベントはあれだけど。

それより前に訪れる、今年のクリスマスイブ…つまり、聖くんのお誕生日パーティー。

これはホント、絶対にハズせないし、気合いを入れて挑まなければならないと思う。

聖くんにとって、この世で過ごす、最後の夜となるのだから。

……そこまで考えた所で、胸が鷲掴みにされたようにギュン、と痛んだ。

留まらせてはいけない。

気持ち良く、送り出してあげなければならないというのに。

聖くんと離れるのが寂しいと思ってしまう、もう一人の、ダメなオレが心の奥底に存在していたりする。
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