幸せになるために
ズバリ、それはオレが子どもの頃に課せられていたルールだったのだ。

そして聖くんは、そのお約束を、ちゃ~んと守っているという訳だ。

いや、日中アパートにいないんだからそんなの分からないじゃないか、と他人には思われてしまうかもしれないけれど、オレはそう確信している。

絶対の自信がある。

そんな、お行儀良くバラエティー番組を鑑賞している聖くんの姿にこの上ない満足感を得ながら、オレはキッチンへと向かった。

ワカメの味噌汁を作り、冷凍しておいた豚のしょうが焼きとご飯を温め、それらをリビングのテーブルへと運び、聖くんと語らいながら食した。

最初の頃は自分だけ食事しているというのが何だか後ろめたくて、聖くんにはテレビの前に居てもらって、その間にオレはダイニングでささっと手早く済ませていたんだけど、何回目かで「お兄ちゃん、食べながらお話しよう?」とねだられたので、それに従ったのだ。

聖くんは気にしていないようだし、だったらわざわざ距離を取らなくても良いか、と思い直したのである。

聖くんが目覚めている時間はとても短く貴重なのだから、それを無駄にしてはいけないと。

そして、ダイニングの椅子は5才児が座るには高すぎてちょっと危険なので、食事をする場所はリビングの方をチョイスしたのである。

一時間ほどで、聖くんはおねむになり、寝室に行ってしまったけれど、とても楽しく有意義な一時であった。

さて、今夜はどうかな。

今までの法則で行くと起きている可能性は高いけど、だけどやっぱりまだ夢の中かもしれない。

それを早く確かめたくて、せかせかと、ほとんど小走り状態で進んでアパートまでたどり着き、郵便受けの中の物を回収してから部屋に向かう。


「あ~…」


寝室の戸を明けて、思わずがっくり。

聖くんは布団の中で規則正しく寝息を立てていた。

今日は起きない日であったか。

残念だな。

とりあえず、洗面所へ行って手を洗った後、いつものようにリュックや上着を定位置に片付け、ルームウェアを手にリビングへと移動し、ストーブの電源を入れる。

そこでふと、先ほど回収して来た郵便物を無意識にテーブル上に置いた事を思い出した。


「あ、そうだ」


着替える前に、まずはこれをチェックしてしまおうかな。
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