幸せになるために
なのでオードブルは無事予約できたこと、パーティー前日にシチューに必要な材料の買い足しはもちろん、飲み物や、料理を取り分ける為の使い捨てのお皿やフォークなどを購入して来るつもりでいる事を伝えた。

ウチにある大人用の食器、カトラリーじゃ聖くんが扱いづらいだろうし、また、それぞれデザインがバラバラの物を使うよりも、統一してしまった方が良いだろうと考えたのだ。

使い捨てと侮るなかれ。

今はとても丈夫で、キレイでカラフルな絵柄の物がたくさん売ってるもんね。

よりパーティーが楽しくなるハズ。


「なるほど。それなら片付けも楽ですし、とても良い案ですね」


吾妻さんは大きく頷きながら同意した。


「じゃあ、折半する料金には、それらもきちんと含んで下さいね」

「え?良いよそんな。それも余ったら、自分で使わせてもらうつもりだし」

「もちろん、余った分は比企さんが引き取っていただいて結構ですよ。でも、その代金は俺も払います。すでにシチューの材料費がかかってて、当日場所も提供してもらうんですから」

「だって、聖くんオレの部屋から出られないし…」

「とにかく、買って来た物のレシートはきちんと取っておいて下さい。後で精算しましょう」


それ以上反論したら何だか無限ループに陥りそうだったので、とりあえず「うん。分かった」と返答し、その話はそこで終わらせた。

そして残りのコーヒーを飲み干した所で「それじゃそろそろ…」と言いながら立ち上がり、玄関まで見送りに来てくれた吾妻さんからお土産を頂いて、102号室を後にしたのである。

その際「賞味期限、一昨日から数えて2週間後なので、忘れないで下さいね」と念を押された。

要するに、約10日間で7個食べきれば良いという訳だ。

それくらいだったら全然余裕。

焼き菓子を見る度に昨日の会話が思い起こされて、何だか切ない気持ちになりそうだけど、かといって食べ物を粗末にする訳にもいかないもんね。

毎日1個ずつ、味わって食べて行く事にしよう。

そんな計画を立てながら、やかんに水を入れてガス台に置き、火を点けようとした、その瞬間。


「スイッチオーン!」


背後からとても可愛らしい、陽気なかけ声が響いて来た。
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