幸せになるために
さぞかし瞳が輝いているんだろうなと自覚しつつ振り向けば、案の定、聖くんが笑顔を浮かべ、カウンターの陰からこちらをコソっと窺うようにして立っていた。


「んふふ。おはよぉ~」

「おはよう!やっと起きたね!」


オレは素早く彼に歩み寄り、屈み込んで目線を合わせつつ言葉を発した。


「お兄ちゃん今日はおしごとは?」

「ん?休みだよ」

「じゃあ、一日おうちにいる?」

「うん」

「わ~い!じゃあぼく、今日はがんばっていっぱい起きてる~!」


聖くんは心底嬉しそうにピョンピョンと飛びはねた。


「あ、そうだ。聖くんが起きたのなら…」


言いながら立ち上がり、オレは寝室に向かって歩き出す。


「今日はあったかいからお布団干そう。寝る時ふかふかになってるよ~」

「ふかふか~♪」


オレの後をトコトコと付いて来ながら上機嫌に言葉を発する聖くんは、超絶に可愛らしかった。

布団をたたみ、掛け敷き両方一気に持ち上げて、聖くんの見守る中リビングへと移動する。

そして窓辺に近付き、床の上に下ろしてそれぞれスペース内に収まるように広げると、カーテンを全開にした。

干すと言ってもベランダの手すりに引っ掛ける訳ではない。

いくら天気が良くても、気温が低いから、外に出しておくと布団がヒンヤリとしてしまう。

実際、この前干して取り込む時にそう感じ、ちょっと失敗したな、と思った。

なので外気に触れないように、なおかつ太陽の光を存分に当てられるように、こうして窓辺に置く事にしたのだ。

これは実家で母さんが、冬場は縁側に布団を干していたのを参考にしている。


「じゃ、お兄ちゃんはお昼を食べちゃおうかな」


オレの動きを興味津々で見学していた聖くんに視線を合わせつつ声をかけた。


「いつものように、ここで待っててくれる?」

「うん」


ソファーを指差しながらそう言うと、聖くんは元気良くお返事したあと、テーブル上にあるリモコンに近付き、テレビの電源を入れる。

そこまで見届けてからオレはキッチンへと向かった。

今度こそやかんを火にかけ、以前作って冷凍しておいた野菜炒めとご飯を皿に盛り、温める。

即席味噌汁をお椀に絞り出している所でタイミング良くやかんが鳴ったので、火を止め、湯を注ぎ、それらを聖くんのいるリビングのテーブルまで運んだ。
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