幸せになるために
「いただきます」と唱えてから、まずは味噌汁の椀に手を伸ばす。


「…今日はやることがいっぱいあるんだよな…」


一口すすり、飲み下してから、独り言のように呟いた。

埃が気になったのと、何だかじっとしていられなくて、リビングダイニングキッチンのエリアだけは昨夜のうちに掃除してしまったんだけど、寝室と風呂、トイレはまだ手着かずである。

また、靴下や下着、タオル類などはその日のうちに洗濯してしまっているんだけど、その他の物は休みの日にまとめて洗うつもりでランドリーラックのカゴの中に入れてあった。

それが結構溜まってしまっているのだ。


「お兄ちゃん、いそがしいの?」


この時間帯はちょうどチビッコが好みそうな番組がやってなくて、聖くんはとりあえず適当にチャンネルを合わせたようなのだけれど、ちょっとつまらなそうだった。

なのでオレが声を発するやいなや、体をこちらに向けて問いかけて来た。


「うん。あ、そうだ」


オレはそこで突然ピン!と閃く。

実は聖くんが起きたらある事をやりたかったんだけど、でも、そんなに時間を費やすものではない。

幼児が退屈せずに過ごせるような遊び道具などここにはないし、かといって一日中テレビを見せるのは抵抗があるので、どうしたものかと悩んでいたんだけど、我ながら良い事を思いついたじゃないか。


「お洗濯とお掃除をやらなくちゃいけないんだけど、聖くんに手伝ってもらっても良いかな?」


そうすればずっと一緒に行動できるし、聖くんも退屈する事はないだろう。


「うん。やるやる~!」


聖くんは大きく何度も頷きながら、それに連動させて両足をパタパタと動かした。


「よし。じゃ、お兄ちゃんこれ食べちゃうから、ちょっと待っててね」


ドカ食いにならないよう気を付けつつ、普段よりハイペースで食事を終わらせ、食器を流し台に持って行き、手早く洗う。

その後洗面所に行き、カゴの中の洋服を洗濯機に入れてスイッチを押して、歯を磨いた後、掃除用具一式の入ったプラスチックケースを持ってリビングに戻った。


「じゃ、まずは隣のお部屋に行こう。テレビは消してくれる?」

「は~い」


ソファーから降り、言われた通りテレビの電源を落としてから、聖くんはオレの後を付いて寝室へと歩を進めた。


「あ。まずはこれを一旦リビングに移してっと」
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