幸せになるために
オレはそう言いながら窓に近付き、カーテンレールに引っ掛けておいたランドリーハンガーを手に取る。

下着やタオルなど、夜のうちに洗ってここに干しておくのである。

量は少なくて軽い物ばかりだし、ハンガーと併せても総重量はさほどでもないので、レールが歪むという事はない。

もちろん、カーテンが濡れないように、その幅の分だけ開けてある。

リビングの掃き出し窓に比べれば大分小さいので、ちょっとくらいカーテンを開けても室内を覗ける範囲が狭いし、そもそも洗濯物自体が目隠しになるから別に支障はないもんね。

さすがに着替える時は一旦閉めるけどさ。

部屋干しでも雑菌が繁殖しにくいという洗剤を使っているので匂いの心配はないし、先ほど布団を干したのと同じ理屈で、窓辺だから晴れの日はすぐに、曇りや雨の日でも、まぁ1日干しておけばたいてい乾く。

そして入浴の際、下着とタオルをここから取って、そのままバスルームに持って行くのであった。

いちいち衣装ケースに仕舞う手間が省けるし、なおかつ空気の乾燥が激しいこの季節、加湿器代わりにもなるのでここに洗濯物を干すのは一石二鳥となるのである。

ハンガーをリビングのカーテンレールに引っ掛けてから寝室に戻り、窓を開けた。

洗面所から持って来た掃除用具の中からハンディモップを選び、そこに伸縮性の柄を付け足して、壁や天井に届くように長さを調整してから埃を払う。

次に、拭き掃除をするための道具を取り出し、所定の位置に専用シートをセッティング。


「じゃあ、この棒をこうやって動かして、畳をふきふきしてくれる?」


実演してみせてから、聖くんにその棒を持たせた。


「こっちの端からあっちの端までよろしくね」

「うん」


聖くんはちゃんとシートを部屋の角に当て、そこから少しずつ前へ前へと移動しながら畳を拭いて行き、壁際までたどり着いた所で向きを変え、また同じ動作を繰り返した。


「そうそう。すごく上手だよ~」


その間、オレは洗剤と雑巾を手に窓に近付き、手早く拭き掃除。

汚れと洗剤が染み込んだ雑巾を洗面所で濯いで戻って来ると、聖くんはちょうど出発地点とは対角線上に位置する、部屋の角まで到達していた。


「お兄ちゃん、ふきふきおわったよ~」

「はーい、お疲れ様」
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