幸せになるために
「やった!全部消えたね!聖くん、お誕生日、おめでとう!」
「おめでとうー!」
無事に5本のろうそくの火を消し終わり、「ふぅ~」と安堵のため息を吐く聖くんに、改めて二人で祝福の言葉をかけ、拍手を送る。
「ありがとう~」
聖くんはちょっと照れくさそうな、だけどどこか誇らしげな、可愛らしい笑顔を浮かべつつ礼を述べた。
オレは立ち上がり、蛍光灯の紐を引っ張って明かりを点けた後、ダイニングテーブル上の包丁と紙皿を取って席に戻る。
……やっぱダメだな。
さっきよりさらに、指先が震えて来てしまって…。
「これも俺がやらせてもらいますね」
すると吾妻さんはケーキを自分の方に引き寄せ、オレがテーブルに置いた包丁と紙皿を一枚、さっと手に取った。
「あ…」
「えーと、これはもう外してっと…。チョコレートとサンタさん達は、あらかじめ避難させておいた方が良いですよね?」
言いながら、ろうそくを抜いてデコレーションケーキが乗っているアルミの皿の端にまとめて置くと、紙皿の上にケーキのオプションを移動し始める。
「あ、うん。そうだね。よろしく」
オレは心底ホッとしながら返答した。
……きっと、吾妻さんはオレの手の震えに気付いているんだろうな。
本当は彼だって、平静ではいられないハズなのに。
共倒れにならないように、聖くんをがっかりさせないように、オレの分まで踏ん張って、パーティーを進行してくれている。
つくづく、優しくて思慮深くて、強い人だと思う。
「3等分て、何気に難しいですよねー」
そんな吾妻さんは眉間にシワを寄せ、色んな角度からケーキを観察し、包丁を最初に置くポジション決めをしていた。
それもオレの心と、この場の雰囲気を和ます演出である事は充分伝わったので、その努力を無にしないよう、オレは明るく言葉を発する。
「アハハ。多少大きさが違っても大丈夫だよ~」
「りきお兄ちゃんがんばって~」
オレ達の声を受け、吾妻さんは意を決したようにケーキに入刀すると、鮮やかな手つきで瞬く間に三つに切り分けた。
「あ、すごく上手」
やっぱ手先が器用なんだな、吾妻さんて。
「りきお兄ちゃんすご~い」
「ふー」
「おめでとうー!」
無事に5本のろうそくの火を消し終わり、「ふぅ~」と安堵のため息を吐く聖くんに、改めて二人で祝福の言葉をかけ、拍手を送る。
「ありがとう~」
聖くんはちょっと照れくさそうな、だけどどこか誇らしげな、可愛らしい笑顔を浮かべつつ礼を述べた。
オレは立ち上がり、蛍光灯の紐を引っ張って明かりを点けた後、ダイニングテーブル上の包丁と紙皿を取って席に戻る。
……やっぱダメだな。
さっきよりさらに、指先が震えて来てしまって…。
「これも俺がやらせてもらいますね」
すると吾妻さんはケーキを自分の方に引き寄せ、オレがテーブルに置いた包丁と紙皿を一枚、さっと手に取った。
「あ…」
「えーと、これはもう外してっと…。チョコレートとサンタさん達は、あらかじめ避難させておいた方が良いですよね?」
言いながら、ろうそくを抜いてデコレーションケーキが乗っているアルミの皿の端にまとめて置くと、紙皿の上にケーキのオプションを移動し始める。
「あ、うん。そうだね。よろしく」
オレは心底ホッとしながら返答した。
……きっと、吾妻さんはオレの手の震えに気付いているんだろうな。
本当は彼だって、平静ではいられないハズなのに。
共倒れにならないように、聖くんをがっかりさせないように、オレの分まで踏ん張って、パーティーを進行してくれている。
つくづく、優しくて思慮深くて、強い人だと思う。
「3等分て、何気に難しいですよねー」
そんな吾妻さんは眉間にシワを寄せ、色んな角度からケーキを観察し、包丁を最初に置くポジション決めをしていた。
それもオレの心と、この場の雰囲気を和ます演出である事は充分伝わったので、その努力を無にしないよう、オレは明るく言葉を発する。
「アハハ。多少大きさが違っても大丈夫だよ~」
「りきお兄ちゃんがんばって~」
オレ達の声を受け、吾妻さんは意を決したようにケーキに入刀すると、鮮やかな手つきで瞬く間に三つに切り分けた。
「あ、すごく上手」
やっぱ手先が器用なんだな、吾妻さんて。
「りきお兄ちゃんすご~い」
「ふー」