幸せになるために
隣の部屋のドアがパタン、と閉まる音を聞きながら、遅れてオレも玄関へと入る。

お隣さんも、すごく感じが良くて話しやすい人だったな。

これなら何とかやって行けそうだ。


「あれ?」


安堵のため息を吐きながら靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて足元の袋を持ち上げようとした所で、ふと、その事実に気が付いた。

温めてもらった弁当が入った袋と、レトルト食品、チョコや煎餅などの菓子類の入った袋と二つあるのだが、後者の袋の口が大きく開いていたのだ。

オレはいつも買い物をした際、中身が飛び出ないように袋の口を縛るクセがついているので、その光景に一瞬我が目を疑う。


……走ったり、投げ出すように袋を床に置いたりしたから、自然にほどけて徐々に開いて行ったのだろうか?

うん、きっとそうだ。

それ以外に、理由なんかある訳がない。


「あー、腹減ったな~」


オレは強引に自分をそう納得させると、我ながら大きすぎる独り言を発しながら、即席味噌汁用の湯を沸かすべく、キッチンへと向かったのだった。
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