幸せになるために
このファミレスはチェーン店で地元にも同じ店があり、どういうメニューがあるのかはだいたい把握している。

その中でオレが個人的にお気に入りで、なおかつ手早く食べられる物という事で、オムライスを選択したのだ。

昼休みが終わる一時までにまた職場に戻らなくてはならないから。

徒歩2分だけれど、歯を磨いてエプロンを着けて、そして5分前に持ち場に着いていなければならない事を考えると、15分前にはここを出ていないと厳しい。


「とりあえず、飲み物先に持って来いよ」

「あ、うん」


オレは頷きながら立ち上がった。

兄ちゃんはすでにアイスコーヒーを飲んでいて、グラス半分くらいの量になっている。

ひとまず一杯目はアイスウーロン茶にしとこうかな。

そんで食後にホットコーヒーで締めて。

せっかくのドリンクバーなんだからお代わりしておかないともったいないもんね。

ただ、ゆっくりのんびり味わっている暇はなさそうだけど。

何故こんな強行軍で会わなければならないのか、実はオレにも分かっていない。

昨夜突然、兄ちゃんから『明日会えないか?』と電話がかかって来たのだ。


「あ~、ごめん。オレ、明日は仕事なんだ」


日曜日だからもしかしたら休みなのではないかと思ったみたいなんだけど、残念ながら出勤の日だったのだ。


『じゃ、仕事が終わってからは?もちろん、俺がそっちに行くから』

「え?終わってからって…。18時過ぎちゃうよ?それから会って、なんやかんややってたら、結構帰りが遅くなっちゃうと思うけど。大変じゃない?」

『いんや?全然。お前だって去年までこっちから通ってて、遅番の日は家に着くの9時過ぎだったじゃん。しかも俺の場合はたった1日の事なんだから。どうってことないよ』

「あー。ていうか、ゴメン。どっちみちダメなんだ。先約があるから」

『あ、そうなんだ』

「うん。アパートの隣の部屋の人と、一緒に夕飯を食べる約束してて…」

『え?お前、お隣さんとそんなに仲が良かったの?』

「うん」

『……もしかして、女性だったりする?』

「え?違う違う!男性だよ。年が近いからさ、結構気が合うんだよね」
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